一般社団法人オンコロジー教育推進プロジェクト(理事長:福岡正博)は、がん患者支援の推進に対する医療者への医学教育助成プログラム(一般社団法人日本癌治療学会とファイザー株式会社のコラボレーショングラント)に応募し、この度支援をいただくことになりました。
プロジェクト名は、「医療者がリードする、がん患者の患者力向上のための啓発プログラム(Patient Empowerment Programs Led by Cancer Care Providers:PEP)です。
本PEPの活動は、2019年日本癌治療学会総会での講演を皮切りに、年に1回のがん医療者へのワークショップおよびがん関連学会の年次総会を通して、啓発活動をおこなって参りました。これまでの活動を通じて、がん患者の患者力を向上することの意義と医療者への教育活動の必要性を強くアピールした結果、教育助成への採用に至りました。
報道関係者のみなさまにおかれましては、「医療者がリードするがん患者の患者力向上のためのプログラムの活動」をご高覧の上、本啓発活動について、今後報道を通じたご支援をいただきたく、ここにお願い申し上げます。
一般社団法人オンコロジー教育推進プロジェクト
理事長 福岡 正博
(近畿大学名誉教授、和泉市立総合医療センター名誉総長)
常務理事 上野 直人
(ハワイ大学がんセンター センター長)
実行委員長 東 光久
(奈良県総合医療センター 総合診療科 部長)
医療者がリードする、がん患者の患者力向上のための啓発プログラム(Patient Empowerment Programs Led by Cancer Care Providers)の活動について
実行委員長:東 光久(奈良県総合医療センター 総合診療科)
実行委員:
小室 雅人 (国立国際医療研究センター 薬剤部)
下村 昭彦 (国立国際医療研究センター 乳腺腫瘍内科)
長谷川 友美(白河厚生総合病院 看護部)
守田 亮 (秋田厚生医療センター 呼吸器内科)
和田 美智子(秋田厚生医療センター がん相談支援センター)
立松 典篤 (名古屋大学医学部保健学科 理学療法学)
スーパーバイザー
上野 直人(ハワイ大学がんセンター センター長)
アドバイザー:
石井 均 (奈良県立医科大学 医師・患者関係学講座 教授)
伊藤 高章 (立正佼成会附属佼成病院 チャプレン)
福岡 正博 (一般社団法人オンコロジー教育推進プロジェクト理事長: 和泉市立総合医療センター名誉総長)
研究責任者(PI):東 光久(奈良県総合医療センター 総合診療科)
共同研究者(Co-PI):上野 直人(ハワイ大学がんセンター センター長)
■ファイザー株式会社との契約締結
2022年4月、一般社団法人日本癌治療学会とファイザー株式会社は、がん患者支援の推進に対する医療者への医学教育助成プログラム「がん患者支援の推進に対する医療者への教育プロジェクト」への助成を目的に公募を開始しました。PEPの教育活動の企画は、2回の審査を経て、2022年10月24日に、採択決定を受けて、ファイザー株式会社との教育助成契約が締結されました。
■プロジェクト名
医療者がリードする、がん患者の患者力向上のための啓発プログラム
Patient Empowerment Programs Led by Cancer Care Providers
■患者力とは
私達、Patient Empowerment Program(以下、PEP)は、がん患者に患者力を啓発するために何ができるか・何をなすべきかについて、がん診療に従事している医療者を対象に多職種で活動してきました。
PEPでは、『患者力』(Patient Competency)という概念を提唱し、患者力を以下のように定義しています。
患者力とは、自分の病気を医療者任せにせず、自分事として受け止め、いろいろな知識を習得し、医療者と十分なコミュニケーションを通じて信頼関係を築き、人生を前向きに生きようとする患者の姿勢である。
医療者が患者の患者力を信じて、それを引き出し、支援すること
■プロジェクトの背景
がん患者は、診断時に人生を根底から覆すような辛い体験をしつつ、一方で治療に関する意思決定を強いられます。合理的な意思決定には、患者に冷静な判断力が必要であり、患者にも医療者にもバイアスがない状態で初めて成立しますが、がん患者においてはその3条件が成立することは難しいのが現状です。
以下のような場面はがん診療に従事する医療者であれば、誰でも一度は経験があるはずです。
1.よく理解できなくても、わかりましたと返事する患者
2.インターネットで宣伝されていた『免疫療法』を受けますと言う患者
3.よく分からないので、先生にお任せしますと言う患者
このような患者はいわゆる『患者力』が低いとされ、医療者はこれまでこうした患者に対して必ずしも積極的に関わることが多くはありませんでした。
■プロジェクト目的~何故、医療者を教育する必要があるのか~
患者はがんにまつわる様々なつらい体験をし、肉体的・精神的に過酷な状況にあります。つまり、患者は自分一人ではその患者力を高めていくことは困難な状況にあるため、医療者がそれをサポートする必要があります。
がんを含め全ての医療は不確実であり、患者と医療者間で合意しながら医療を進めていく必要があり、そのためには患者力が十分発揮できる必要があるのです。
そして、患者力を発揮するために、がん患者に求められる必要なスキルとして、私たちはMACスキルを提唱しております。
M:Medical literacy(情報を収集・理解・吟味・適用)
A:Assertiveness(想いを伝える力)
C:Communication(言葉のキャッチボールができる力、会話と対話の力)
その上で、PEPでは以下の目的・目標を掲げております。
目標:医療者がMACスキルの重要性を認識し、患者のMACスキルを啓発し引き出せるようになること
目的: 患者力を、Evidence-based medicine(EBM)、チーム医療に続く、がん診療における第3の柱として位置づけ、社会に広めること
これを受けて、2023年1月から2025年12月までの本プロジェクト3年間における目標は、以下の通りです。
1.患者力啓発・向上のための医療者向けワークショップの有効性を共感尺度による客観的評価で確認する
2.それが医師の行動変容や患者アウトカムに寄与するかどうかの仮説検証するための準備を行う
3.ワークショップ参加者にファシリテーターとなってもらい、各地でワークショップを開催してもらうための共通コンテンツを開発する
4.患者力啓発活動を、関係する他団体との交流や協働を通じて、より多くの医療者や患者・市民に普及するための基盤を作る
私たちPEPの活動は、申請団体であるオンコロジー教育推進プロジェクトのミッションである、『がん医療の推進に貢献することを目的とし、がん患者さんがチーム医療の真の主役となり、がんであることがハンデとならない社会の実現を目指します』に資するものと考えております。
■プロジェクト対象者(受講者)
ワークショップ受講者は、がん診療に従事する医師、薬剤師、看護師とする。
ワークショップでは、医師・看護師・薬剤師で1回30名程度を想定しており、これを協力施設5施設において年1回開催予定として、3年間で計450名の修了を目標とする。
また、ワークショップ以外に、学会の年次総会および関連団体や非医療者との交流や協働を通じてPEPの普及に努めていきます。
■期待するアウトカム
全てのがん患者が患者力を発揮できるようになれば、患者のQOLも予後も向上し、がん以外の慢性疾患患者にも広がることが期待される。最終的には患者力を義務教育の中に組み入れ、全ての国民の素養となり、それぞれの人生のwell-beingを実現できるようにする。
■プロジェクトデザイン
具体的な実施方法
1)ワークショップ開催
協力病院でワークショップを年1回開催する(教育目的:オンライン)
公募型ワークショップも年1回開催する(普及目的:インパーソン)
2)ファシリテーター養成
マニュアル作成
養成講習会開催
3)ワークショップ新規コンテンツの開発
セッティング別(初発時・再発時・積極的治療中止時)
世代別(AYA世代、高齢者)
レベル別(基礎編、発展編)
4)学会との協働
関連学会の学術集会内でシンポジウム開催、ワークショップ開催、一般演題募集
■スケジュール
開始日:2023年1月1日/終了日2025年12月31日
Comments